世界遺産
世界遺産は、異文化を理解する教材の一つです!!
世界遺産 World Heritage?
1972年にユネスコ総会で採択された「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約(『世界遺産条約』)」のことです。
1960年、エジプトのナイル川流域にアスワン・ハイ・ダムを建設が始まり、ヌビア遺跡が水没することが懸念されました。
これを受けて、ユネスコが、ヌビア水没遺跡救済キャンペーンを開始。
世界の60か国の援助をもとに技術支援、考古学調査支援などが行われ、ヌビア遺跡内のアブ・シンベル神殿の移築が実現したことがきっかけです。
世界遺産は、異文化を理解する教材です
➢ 世界遺産に登録されるには、ユネスコの「世界遺産委員会」において、その物件(資産・エリア)の内 容が、他に類例のない固有のものであり国際的に決められた登録基準(文化遺産6・自然遺産4)に照ら して「顕著で普遍的な価値」があり「真実性」と「完全性」が認められることが必要となります。
➢ 登録された物件は、登録後も有効な保存管理がされることも必要条件となっています。
➢ 登録理由となった要素が失われたと判断された資産は世界遺産リストから抹消され、現在3件が「抹消さ れた世界遺産」があります。「オマーンのアラビアオリックスの保護区(2007年)」、 「ドイツのドレスデン・エルベ渓谷(2009年)」 「海商都市リヴァプール(2021年)」
➢ 2023年9月に追加された分を含んで世界遺産リストに記載されている文化遺産は933件、自然遺産は227件、複合遺産は39件、合計 1199件です。
➢ その中で後世に残すことが難しくなっているか、その強い懸念が存在する場合には、「危機にさらされ ている世界遺産リスト(危機遺産リスト)」に加えられます。
➢ 明確な定義付けはありませんが、平和の希求や人種差別の撤廃などを訴えていく上で重要な物件は、 「負の世界遺産」(負の遺産)と呼ばれています。
➢ 日本には文化遺産は20件、自然遺産は5件、複合遺産は0件の合計25件があります。
➢ ユネスコには、その他「無形文化遺産」、「世界の記憶」、「エコパーク」、「ユネスコ世界ジオパー ク」があります。
◆世界遺産条約採択50年をむかえて
1972年の第17回UNESCOの総会で世界遺産条約(正式には「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」)が採択され、2022年11月16日で50年になります。
これは、1960年代、エジプトでナイル川流域にアスワン・ハイ・ダムの建設計画が持ち上がりこのダムが完成するとヌビア遺跡が水没する危機がわかり、これを受けたユネスコが、「ヌビア水没遺跡救済キャンペーン」を開始しました。
そして、世界の60ヶ国の援助により、技術支援、考古学調査支援などが行われ、ヌビア遺跡内のアブ・シンベル神殿の移築が行われました。
これがきっかけとなり、開発などから歴史的価値のある遺跡、建築物、自然等を国際的な組織運営で守ろうという機運がうまれたのでした。
地球、そして人類の歴史が生み出したかけがえのない「人類共通の財産」を後世に伝えるため、世界遺産条約に基づき世界遺産リストが作成されました。
「文化遺産」「自然遺産」「複合遺産(文化遺産と自然遺産を兼ね備えたもの)」の3種類にわけて登録された物件は、この50年で1,157件(文化遺産900件、自然遺産218件、複合遺産39件)になりました。
1972年 「世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約」が採択される。
1975年 20カ国の締結により条約が発効される。危機遺産リストが作成される。世界遺産基金が設立。
1978年 世界遺産登録基準(文化遺産6、自然遺産4)が定められ「ガラパゴス諸島」など12件が初の世界遺産として登録される。
1992年 日本が条約を締結。文化遺産の新たな分類項目に「文化的景観」が追加される。
1994年 木造建築などの遺産価値を指摘した「真正性に関する奈良文章」が採択される。
2001年 地域住民の経済利益と遺産の保護とを両立させるために、「世界遺産を守る持続可能な観光計画」の作成が始まる。
2002年 世界遺産委員会の4つの主要な戦略目標(信用性の確保、保存活動、能力の構築、意思の疎通)が設定される。
2007年 世界遺産委員会の戦略目標の5番目に「コミュニティの活用」が追加される。
2008年 世界遺産そのものの登録地域は資産(property)と呼ばれ、緩衝地帯と明確に区別されるようになる。
2012年 世界遺産条約採択40周年
2021年 第44回世界遺産委員会終了時点での締約国は194か国である。
2022年 世界遺産条約採択50周年
「異文化を理解する教材」である世界遺産ですが、世界遺産に登録されることで周辺地域の観光産業に多大な影響があります。
もともと文化遺産に対する観光地化の弊害については、世界遺産以前から問題視する意見はあり、ICOMOSでは文化遺産の保護を訴えていました。
しかし、世界遺産を観光振興に結び付けようとする姿勢は根強く、その弊害も表出しています。
けれどもその一方で、貧困にあえぐ国などでは観光を活性化させることで雇用を創出することが、結果的に世界遺産を守ることにつながる場合もあります。
ただ、観光振興の効果は余り続かず、海外では紛争で破壊された物件もあり、「人類共通の財産」をどのように後世につなぐかが、今後の課題となっていきます。